2019年06月21日
徳島 ケアプラザ美馬の特養では
今年度、本格的に『ノーリフト・ケア』に取り組みはじめました。
『ノーリフト・ケア』とは・・、
「押さない・引かない・持ち上げない・ねじらない・運ばない」介護・介助方法のことです。
これにより・・・、
1,介護職員さんの腰痛発症を予防・減少させます
2,介護職員さんや利用者さんの負担の減少・安全性の向上をはかります
3,介護の仕事が負担少なくかつ長く続けられることにより、人の生活を支援し、人生に関わるとういう魅力ある介護の仕事に就く人を増やしたい
今日は、『ノーリフト・ケア』への取り組みのこれまでの軌跡をご紹介します。
ちなみに・・、下記の写真は、リフトを使い、車椅子からベッドへの乗り移りを行っている様子です。
リフトを用いた移乗動作介助は、原則として職員2名で行うようにしています。
『ノーリフト・ケア』を本格的に導入する以前には、
車椅子からベッドへの乗り移り(移乗介助)は、職員2名が、
「せーのーでっ、よっこいしょ」と利用者さんの身体を抱えたり持ち上げたりして介助をしていました。
利用者さんも、力を入れる職員の掛け声とともに「ふんっ」と力が入っていたと思います。おのずと身体も緊張しますよね。
それが・・・、
リフトを用いると、ゆったりとリラックスして体を預けられます。
ハンモックに乗って揺られている感覚でしょうか。
介助する職員さんにとっても、介助される利用者さんにとっても、安全で負担の少ない方法です。
ケアプラザ美馬特養での『ノーリフト・ケア』には、3つの道具を用いています。
1,移乗介助用リフト
2,スライディングボード
3,スライディングシート
1,移乗介助用リフト
こちらが新しく導入したリフトです。2台購入しました。
2,スライディングボード
こちらが、スライディングボードです。
右側の青い色の物を、7枚新たに導入しました。
板の表面がツルツルしていてよく滑ります。
これを利用者さんの身体の下に敷き入れることにより摩擦を少なくすることができます。
身体を持ち上げず、横に滑らせて移動できるようにする道具です。
スライディングボードは、主にベッドと車椅子の間の乗り移り(移乗介助)に用います。
新たに導入したスライディングボードは、コンパクトに三つ折りにたためるので、
こうやって壁に引っ掛けて等間隔に設置し、使いたいと思った時にすぐに使えるように工夫しています。
3,スライディングシート
こちらが新しく購入したスライディングシートです。
表面がツルツルした布なんですが、これを利用者さんの身体の下に敷き入れることにより摩擦を少なくすることができます。
身体を持ち上げず、横に滑らせて移動できるようにする道具です。
上手く活用すれば、ベッド上や車椅子上等、利用者さんの身体の位置を移動させたい様々な場面での介護負担の軽減につながります。
5月に開催した「家族連絡会 総会」では、
『ノーリフト・ケア』の取り組みについてリフトの実演を交えて説明をさせていただきました。
最後に、研修についてまとめてみます。
いくら良い道具でも、うまく活用してこそ最大の力を発揮します。
『ノーリフト・ケア』の取り組みのポイントは、意識改革・導入・定着・継続の各課程にあると考えています。
1,なぜそれをするのか?の目的づくりや目的の理解と浸透
2,どのような道具を選び、どれだけ導入するか
3,道具をいかに活用していくかの定着研修
4,定期的に振り返りを行い、ブレやズレを修正し継続していく
新しい変化の際には最初必ず抵抗感が生じます。
それとどのように向き合い折り合いをつけていくか・・。
そこにパワーがいります。
①これまで慣れ親しんだやり方の方がやりやすいという変化への不安感
②ちゃんとできるだろうかという未知への不安感
③これまでよりも動作の工程が増える=時間がかかる=1日にしなければいけないことが終わらせられる?という不安感
研修会を通じて、上記のような不安感を徐々に減らしていけるように取り組んでいます。
導入検討当初から、実際の道具を使っての実践研修や座学研修を繰り返し行ってきています。
また、毎日行うケアの場面において、「もっとこうしたほうがより良くなるのでは?」という話し合いをしながら、より良く活用できる工夫を重ねています。
身内の僕が言うのもあれですが・・・、
ケアプラザ美馬の職員さんの素晴らしいところの一つとして、
”利用者さんのより良い生活の実現のために創意工夫をしていく力とその現場力”があります。
過去の成功経験:『全面紙おむつ化と排泄ケア向上への取り組み』があったので、
今回の『ノーリフト・ケア』も同様に、
現場の職員さんが創意工夫の話を重ねながら、きっと上手く浸透活用してくれるという期待をしています。
下の写真は、リフトのメーカーさんに来ていただいてリフトの使用方法を教えていただいている研修の様子です。
普段は介助をする側の職員さんも、リフトで移乗介助をされる側の体験することで、より安全な介助方法を学ぶ意識が強まります。
◆導入から2ヶ月が経過した6月の職員個別面談にて、
『ノーリフト・ケア』の取り組みについての感想や評価を聞いてみたところ、
・予想以上に、新しく購入したスライディングボードが使いやすい
・ノーリフトケアに取り組みだして、介護負担が軽減された
という意見がある一方で、
・それらの道具を正しい使い方で活かせているか?
・使い方の基本をみんなが十分に理解しているか?
・道具は使いだしたけど、「持ち上げる・体をひねる・引っ張る」という動作をまだ行っている場面が見られる
・道具を活用する意識に温度差が感じられる
・利用者さんの状態に合わせて正しい道具を選択して使用する必要がある(リフトが適正な方でも無理にボードを使ってやろうとしているケースも感じられる)
という意見がきかれました。
そこで・・・、
6月10日の特養研修会で、スライディングボードやシートの基本的な使用法と、なぜ『ノーリフト・ケア』に取り組むかの目的の再確認を行いました。
DVDで、スライディングボードやシートの活用方法の基本を再確認しました。
その他、実際に職員さんが実演しながら様々な介助場面での活用方法を確認しました。
その様子を、ビデオ撮影し、この研修会に参加できなかった職員さんにも同様の情報が共有できるようにしたり、何回でも見返したりするように工夫しています。
「動画投稿サイト「You Tube」にも、これら道具を使った移乗動作の方法がたくさんあるので、各自それらも参考にすること」
研修で注意点として意識づけをしたポイントは・・・、
・まずは基本をきちんと理解することが大事
・基本がしっかりできて、そこから応用に発展させていくこと
・職員さんどうしがお互いに声を掛け合い、自分たちのために『ノーリフト・ケア』を推進していきましょう。
つづく・・・。
ほうらいのまごころツール
「喜びづくりの七つ道具」
6,心にパレットを持ちます
福祉の心や専門性を磨く努力と
自分自身の創意工夫を心のパレットで
重ね合わせて 虹色の未来を描きます
@まさ